IT 用語の説明

Shift Left

Shift Leftは、問題解決やその他の重要な活動にかかるコストを抑え、問題解決を迅速化するためのプラクティス、より的確に言えば戦略です。

IT担当者の皆さまは、本質的に問題解決のプロフェッショナルです。ソリューション志向が身に付いており、その能力を日々発揮されています。 

しかし、長い間、一日の大半を問題のトラブルシューティングに費やしてきたのではないでしょうか。対応すべき問題が多すぎて手が回らず、組織の有効性を高めるような、より戦略的なプロジェクトに取り組む時間がなくなっている場合もあります。ほぼ常に事後対応に追われているように感じるかもしれません。 

そう感じているのは皆さまだけではありません。IT環境の複雑化が進む一方で、それに見合うテクノロジーが十分に整っていないため、多くのITチームが同じ状況に置かれています。しかし、この状態を続ける必要はありません。部門を「左へシフト」できればできるほど、こうした問題は実質的に自動で解決されるようになります。 

この記事では、Shift Leftのメリットと、それが組織にどのような影響をもたらすかを理解していただくことを目的としています。詳しく見ていきましょう。

Shift Leftの意味

ITSMにおいてShift Leftとは、問題が発生した時点にできるだけ近い場所で問題を解決し、サポートを提供することを指します。

Shift Leftは、問題解決やその他の重要な活動にかかるコストを抑え、問題解決のスピードを高めます。これは主に自動化によって実現され、通常はフロントラインのサポートデスクアナリストが対応する問題を自動的に解決できるようにします。Shift Leftを実現する究極の方法は何でしょうか。エンドユーザー自身が問題を解決できるよう、その力をエンドユーザーの手に委ねることです。

どちらのアプローチも、解決を左へ、つまり元の問題により近い場所へシフトします。また、これは一度実施して終わりのプロセスではありません。継続的な見直しと再評価を必要とし、イノベーションの環境を育む、常に進化するプラクティスです。その結果、長期的には時間とコストを削減し、セキュリティと生産性を向上させることができます。

Shift Leftのメリット

Shift LeftのIT戦略を導入することで、いくつものメリットが得られます。

解決の迅速化: チームがチケットを解決するまでにかかる時間を短縮します。これにより、チームは事後対応型からプロアクティブな状態へ移行し、より大きなビジネスインパクトをもたらす戦略的施策に知見と能力を注げるようになります。

エスカレーションの削減: Shift Leftは、高度な人的介入を必要とするチケット数の最小化にもつながります。これにより業務中断が減少し、エージェントの効率を高く保ちながら、ユーザーの生産性を向上させます。

従業員エクスペリエンスの向上: エージェントを待つ必要も、業務を中断する必要もなく、問題をシームレスに解決できるようになることで、従業員満足度が高まり、組織全体におけるIT部門の評価も向上します。

コストの最適化: 問題解決を高コストな専門担当者ではなく、よりフロントラインで対応できるようにすることで、工数や人員に関連するコストを削減できます。さらに、チームメンバーをより戦略的な業務に振り向けることができます。リソースと資産をより有効に活用し、最も効果的なリソースを適切なプロジェクトに配置できます。

何が必要か

顧客のエンパワーメントから説明責任の促進、ユーザーとITスタッフのエクスペリエンス向上まで、Shift LeftはIT部門に大きな機会をもたらします。Shift Leftの取り組みを進めるうえで、どのような重要事項を考慮すべきでしょうか。

  • ナレッジ共有。 Shift Leftは、顧客満足度を高め、IT部門内および組織全体でのチームワークを促進することを目的としています。サービスデスクは、顧客がITの問題について支援を求める重要な接点であるため、ITSMのバリューチェーンにおいてナレッジは最も重要な資産となります。これは、課題に効果的に対応し、改善を推進するために、ITサポート階層全体でナレッジと専門性を構築することの重要性を示しています。
  • セルフサービス。 Shift Leftは、真のセルフサービスを通じて顧客のエンパワーメントを高め、効率を損なうことなく、より迅速にソリューションへアクセスできるようにします。ITSMの大きな改善は、サービスカタログの自動化、セルフサービスポータルに適したサービスの特定によって実現され、ユーザー満足度を高めるとともに、戦略的なビジネスプロジェクトに向けてITリソースを解放します。
  • 従業員エクスペリエンスへの注力。 Shift Leftでは、従来の「指揮統制」型の考え方から、顧客エクスペリエンス、応答性、エンドユーザーのエンパワーメントを重視する方向へ移行します。主にコスト削減に注力するのではなく、文化的変革、ナレッジ管理、プロセス設計への初期投資に加え、継続的な保守と改善が必要になる場合があります。

Shift Leftを始めるには

IT部門をShift Leftへ移行させることは、一夜にして実現するものではありません。しかし、ITサービスチームは、いくつかの基本的なステップに注力することで、その取り組みを始めることができます。

1. 反復的なタスクを特定する

サービスデスクのデータを掘り下げ、この取り組みの第1フェーズを開始するために必要なインサイトを得ます。レポートを作成し、サポートチームの時間と注意を占有しているタスクを特定します。

頻繁なパスワードリセット依頼、基本的なソフトウェアのトラブルシューティングチケット、事前承認済みアプリケーションへの反復的なアクセス要求はありませんか。これらは、いわゆる「手を付けやすい成果」であり、人的介入を最小限に抑えられる、自動化の有力な候補となるタスクです。

2. 自動化を推進する

ITSM自動化ソリューションを活用し、先に特定した反復的なタスクに対応する自動ワークフローを設計します。 

よく見られる課題については、通常、すぐに利用できるワークフローや簡単にカスタマイズできるワークフローが用意されています。多くのベンダーは、一般的なITSMのボトルネックに対応する事前構築済みの自動化を提供しています。こうした事前構築済みワークフローは、大幅な時間短縮につながり、さらなる変更のための強固な基盤となるため、確認しておく価値があります。

3. セルフサービスを強化する

よく発生する問題に対応する、使いやすいガイド、FAQ、さらには動画チュートリアルを備えた堅牢なナレッジベースの構築に投資します。生成AIを備えたITSMプラットフォームなら、インシデントに関するナレッジ記事を迅速かつ自動的に生成できます。ユーザーが自分でソリューションを見つけやすくなるほど、サービスデスクの負担は軽減されます。

セルフサービスポータルにより、ユーザーははるかに簡単に自己解決できるようになります。ITSMプラットフォームを活用して、ユーザーがナレッジベース記事にアクセスし、パスワードをリセットし、定型的なリクエストを送信できる環境を提供しましょう。いずれも、サービスデスクに連絡する必要はありません。

その結果はどうでしょうか。

  • チケット件数の削減。 定型タスクを自動化することで、サポートチームにかかる単調な作業とコストを取り除きます。
  • ユーザーエクスペリエンスの向上。 アクセスしやすいセルフサービスオプションにより、ユーザーは基本的な問題を自力で解決できるようになり、待ち時間とフラストレーションを大幅に削減できます。
  • IITスタッフの解放。Shift Leftにより、サポートチームは問題の予防、複雑な問題に対するソリューションの調査、強化されたユーザーサポートの提供など、プロアクティブなタスクにより多くの時間を割けるようになります。

Shift Leftテスト

ソフトウェア開発において「Shift Leftテスト」とは、アプリケーションのテストサイクルをソフトウェアデリバリーライフサイクルのより早い段階へ移すことを意味します。これにより、問題をはるかに早期に特定し、修正コストが高くなる前、そしてユーザーに届く前に修正できます。

ITサービスデリバリーにおいても、ほぼ同じ意味を持ちます。ITSMに適用したい新しいプロセスやテクノロジーをテストするための、段階的なプロセスを以下に示します。 

  1. データを収集する。 発信者データ、問題の種類、質問内容を分析し、頻繁なパスワードリセット依頼などのパターンを特定して、戦略的な計画に役立てます。 
  2. 「手を付けやすい成果」を選ぶ。 パイロット施策では、問題が頻発し、解決に時間がかかり、コストが高い領域に注力します。  
  3. 下位階層の従業員に権限を付与する。 スタッフが新しいツールやシステムを使えるようトレーニングし、より多くのヘルプデスク対応を担えるようにすることで、上位担当者の負担を軽減します。
  4. エスカレーションのトリガーを設定する。 対応時間や試行回数など、問題をエスカレーションするための明確な基準を作成し、サポートを効率化して過負荷を防ぎます。
  5. プログラムをテストする。 A/Bテストを実施して、新しいプロセスや手法の有効性を標準手順と比較測定し、アプローチを改善します。
  6. 成功を測定する。 チームのパフォーマンス、サービスコスト、ROIを評価して財務的影響を判断し、プログラム拡大の妥当性を示すために、適切なKPIを必ず設定します。
  7. 成功をさらに広げる。 初期の成功を基盤に、データを分析してさらなる効率化の機会を探り、得られた知見を他のサービス領域の改善に活用します。

まとめ

Shift Leftは、IT組織の生産性と戦略性を高めるうえで非常に価値のあるプラクティスです。インシデント解決をエンドユーザーに近づけ、さらに左へ進めて自己修復へと移行することで、サポートチームは、エスカレーションの削減、従業員エクスペリエンスの向上、リソース配分の最適化、セキュリティの強化を実現しながら、より複雑な問題の解決に注力できます。