AI:ITSMオートメーションの未来
Ivantiデジタル体験レポートシリーズ
Ivantiデジタル体験レポートシリーズ
AIは効率向上を実現する革新的なツールとして広く認知されていますが、組織がレジリエンス(システムの復旧力・強靭性)構築にAIを活用する重要性も、より多くの企業が考慮すべきです。

IT部門は、以下の複雑な課題に直面しています。
多くのITプロフェッショナルが、こうした課題に対応するためにはAIの変革的な力が不可欠であると認識しています。
実際に、65%がAIと自動化がITサービス全体の品質を向上させるだろうと予測し、86%がAI搭載技術がIT組織の効率性向上に不可欠だと回答しています。しかし、AIのメリットはそれだけではありません。
AIによる運用自動化への移行は「ITレジリエンス」(重要システムの安定稼働や障害発生時の迅速回復力)も強化します。AIは、障害発生前に問題を検知・対応し、インシデント対応の迅速化およびダウンタイムの短縮を実現します。
実際、ITプロフェッショナルの85%が、AIによる根本原因分析や予測保守がユーザーに影響を及ぼす前に問題を特定し、ITチケット件数の減少につながると考えています。現時点でAIを活用した根本原因分析を利用しているのは28%に留まります。
またインシデント管理に留まらず、AIはリソース計画の高度化にも貢献します。AIを活用することで将来のリソース需要を予測し、インフラのプロアクティブな拡張を可能にします。現在AIによるリソース最適化を行う組織は35%です。
「ITリーダーは、コスト削減や短期の自動化を目標にするだけでなく、AIによるリソース計画やAIセルフサービスなど、長期的なレジリエンス構築に注力すべきです。これにより、IT部門はより高度な課題に対応でき、従業員体験や事業継続性を向上できます。」
— Ivanti ソリューションマーケティング担当副社長 Corinna Fulton(コリナ・フルトン)

ITプロフェッショナルの多くはAIのポジティブな変革力に確信を持っています。しかし、その恩恵を最大化するための「教育・研修」が不十分です。

IT部門では、AIがもたらす変革に期待が高まっています。
また、AIによるメリットは効率性だけではありません。ITプロフェッショナルは、AIが自分たちの仕事の質も高めてくれると考えています。これほどの恩恵があるにもかかわらず、多くの企業は従業員がAIを効果的かつ安全に使いこなせるよう、十分なサポートを行えていません。生成AIツールの使用が許可されている職場でも、60%が「業務での使い方についての研修がまだ提供されていない」と答えています。
AIの普及と教育のギャップは、大きな機会損失であり、IT部門がAI導入を前向きに捉える一方、多くが独学で対応せざるを得ない状況です。
この教育不足は、IT人材不足が進む中で、特に懸念すべき点です。
たとえば、かつてない数の学生がコンピュータサイエンスなどの技術系学位を取得して大学を卒業しているものの、AI分野の急速な進展により、こうしたスキルが業界需要に追いついていない状況です。具体的には:
Ivanti独自の調査でも、3社に1社(33%)が、IT自動化の導入にあたってスキル不足が大きな障壁となっていると答えています。
AIによってITの仕事が根本的に変わるにつれ、スキルギャップの影響は一層大きくなっていきます。 AIや自動化が定型業務を担うようになれば、ITプロフェッショナルはAIの運用管理や高度な問題解決、ビジネスとの連携など、より戦略的な役割へと移行していくでしょう。
人材進化はすでに始まっています: ITプロフェッショナルの55%以上が「AIや自動化の導入によって、新たな職種や専門分野が社内に誕生した」と報告しています。
「ITリーダーは、ルーチンで自動化可能な業務と、付加価値の高い業務を明確に区分し、ターゲットを絞ったスキルアップ投資やチーム間協働、成果とフィードバックの継続的なレビューを通じてAIと自動化の恩恵を従業員の成長につなげるべきです。」
— Ivanti グローバルテクニカルサポート担当上級副社長 Sterling Parker(スターリング・パーカー)

IT運用の領域におけるAI・自動化の活用事例は増加しているものの、普及にはバラツキがあります。

Ivantiの調査では、多くのIT部門が個別業務レベルではAIを活用している一方で、業務全体の変革へと十分に活かしきれていないことが明らかです。
一方で、より高度なIT自動化ユースケースの導入は依然として中程度〜低水準にとどまっています。 予測保守(42%)やAIによる根本原因分析(28%)など、高度な自動化活用はまだ限定的です。
このAI導入が進まない背景として、以下のような課題があります。
高品質なデータ活用の必要性:多くのIT部門が断片的・未整備のデータやレガシーシステム、未更新のナレッジベースに苦慮しています。89%がデータの縦割りがIT運用に悪影響を与えていると回答
既存システムとの統合コスト・複雑性:レガシーインフラのAI対応には多額の先行投資が必要。38%が技術的複雑性を運用面の最大の障壁として挙げています。
セキュリティ・プライバシーリスク:AI活用には機密データの処理を伴うため、脆弱性や情報漏洩への不安が拭えません。42%がセキュリティ・コンプライアンスリスクをIT自動化の最大の課題と認識しています。
導入初期投資額と意思決定の遅延:リーダーは、より高度なAI活用は不確実性が高くROIを求められがちで、大規模組織では合意形成に時間がかかります。
「AIプロジェクトが組織全体で統合され、測定可能かつ広く普及するためには、ITの目標と経営目標の連携が不可欠です。全社を巻き込み、明確なデータ構造設計、技術・プロセスギャップの解消、新しいAI主導ワークフローの運用スキル普及に取り組んでください。」
— Ivanti レべニューオペレーション&コーポレートIT担当上級副社長 Scott Hughes(スコット・ヒューズ)

AIは既に予測的な洞察やITSMワークフローの効率化を実現していますが、さらなる突破的な活用が期待されています。

次に見据えるべきものは何でしょうか?AIをIT組織全体に展開し、定型作業を置き換えるだけでなく、より高度かつ将来を見据えたアプリケーションを推進していくことです。
AIは既に多くのルーチン業務で活用されています。
ITルーチン業務の自動化:分析によれば、ITチケット1件を解決する平均コストは15~17ドルで、高度な対応の場合はさらに高額です。HDIの調査によると、企業はパスワードリセットやシステム再起動など大量に発生するリクエストをAIで数秒で対応し、大企業では年間数百万ドルのコスト削減につなげています。現在、組織の58%がパスワードリセットの自動化、52%が従業員のオンボーディングのためにAIを使っています。
セルフサービスAI(AI活用のITSM):ITSMプラットフォーム内にインテリジェントなチャットボットやバーチャルエージェントを導入することで、従業員が自ら一般的なITトラブルを解決できるようになり、サポート対応の迅速化およびIT専門職の高付加価値業務へのシフトが可能になります。オフィスワーカーの間でもこの方法が広がっており、36%が「IT問題解決には自動化やチャットボットを選びたい」と回答(1年前から5ポイント上昇)。AI ITSMは従業員が自分に合った方法でテクノロジーを管理できる“Win-Win”な仕組みです。
プロアクティブなモニタリングと自己修復:AIシステムはインフラを常時監視し、障害の予兆を検知、そして人手を介さず自動で問題解決まで行うため、稼働率の向上・業務継続性の向上・従業員体験の改善につながります。
今後AIエージェントが協調し、多段階プロセスの自律的運用を担うようになります。
エージェント型自動化:自律的かつ協働可能なAIエージェントが、サイバーセキュリティ・インシデント対応からソフトウェア展開まで、複雑なワークフローを人間の最小限の監督下で共同対応し、インシデント解決・リソースの割り当て・コンプライアンス対応を担います。
エンドツーエンドのライフサイクル管理:AIエージェントは障害を修復するだけでなく、構築から廃棄までITシステム全体の検知・診断・最適化も自律的に行います。
サステナビリティアルゴリズム:AIは最小限の消費電力・ハードウェア負荷でITワークロードを最適化し、環境面・ビジネス面の双方にとって最適なバランスとなるよう自動で制御します。IT専門家の82%は「サステナビリティや省エネルギーが経営層にとって重要」と感じつつ、IT組織が“非常にサステナブル”だと自信を持てるのはわずか24%です。
リソース監視:AIによるモニタリングでCIOは過剰なクラウドリソース、未活用ライセンス、冗長アプリなど、コストを圧迫する要因を発見しやすくなります。
「AIイノベーションが事業成長と従業員の成長の両方を支えるため、各組織はまずステークホルダーの意見を取り入れたAIロードマップを策定すべきです。その上で、全社横断型のAIガバナンス・推進委員会を設置し、AIの導入・開発・活用を監督。さらに、従業員主体で運用現場の最適化と継続的な学習投資を行い、AIの進化スピードに対応できる体制構築が求められます。」
— Ivanti グローバルテクニカルサポート担当上級副社長 Sterling Parker(スターリング・パーカー)

本レポートはIvantiの2025 職場におけるテクノロジーレポート:フレキシブルワークの再構築および2025 従業員のデジタル体験レポート:次のレベルのDEXに基づいています。これらの調査は2025年2月と5月に実施され、世界中のITプロフェッショナル3,000名以上とオフィスワーカー6,000名以上を対象に調査を実施しました。
調査はRavn Researchが実施し、MSI Advanced Customer Insightsが対象者を募集しました。調査結果は無加重集計です。