システム管理者であればITILの導入を検討している方も多いのではないでしょうか。しかし、闇雲にITILを導入しても手間がかかるだけで、メリットが受けられないケースもあるのです。導入を検討しているシステム担当者の方は、しっかりITILについて調べてから導入に取り掛かりましょう。

今回はITILとは何なのか、またITILを導入する際の注意点をご紹介します。システム管理の担当の方はぜひ参考にしてみてください。

ITサービスやITILに関してより詳しく知りたい方は、こちらからご覧ください。

ITILとは

ITILとは「Information Technology Infrastructure Library」の略で、ITサービスマネジメントにおける成功事例(ベストプラクティス)をまとめた書籍郡のことを指します。わかりやすく体系化されており、ITサービス管理についての考え方などがまとめられています。書籍郡といってもマニュアルのような文書が集められているわけではなく、ITILの構成自体がITサービス管理のテンプレートそのもののようなものとなっています。

ITILの始まりとしては、1980年代欧米でのITのアウトソーシング・ビジネスの開始がきっかけといわれています。この際、イギリス政府がITに関する投資対効果の抜本的改善を狙ってITILをつくり始めました。最初に発行されたのが1989年で、その後2011年に改訂がされています。

最新版は2019年に発行された『ITIL 4 Foundation』です。今ではITサービスの教科書のような立ち位置であり、世界各国の政府や企業で取り入れられています。

ITILの5つのカテゴリーとは

ITILはITサービスのライフサイクルに沿って「サービスストラテジ」「サービスデザイン」「サービストランジション」「サービスオペレーション」「継続的なサービス改善」のカテゴリーに分類されています。ここでは、それぞれどのような内容かご紹介します。

サービスストラテジ

「サービスストラテジ」は、ITサービスの戦略立案に関するカテゴリーです。自分たちがどのような領域で事業を行うのか、その領域で自分たちがどのようなポジションなのか、事業に必要なリソースをいかに調達するかについて検討します。

サービスデザイン

「サービスデザイン」は、サービスストラテジで作成した戦略を実現するカテゴリーです。加えて、費用対効果や顧客満足度を維持しながらスムーズに導入するためにITサービスを設計するプロセスでもあります。ITサービスの機能性だけでなく、コストやスピードとのバランスを検討することになります。

サービストランジション

「サービストランジション」は、サービスデザインで設計したITサービスを本番環境に移行・導入していくプロセスです。しっかりと計画を立案し、サービス資産の管理やナレッジ管理を行うことが重要になります。

サービスオペレーション

「サービスオペレーション」は、実際にサービスを提供するプロセスでサービスの品質を管理するカテゴリーです。インシデント管理や要求実現、イベント管理、アクセス管理、問題管理といった5つのプロセスで管理されています。

継続的なサービス改善

この「継続的なサービス改善」は他の4つのすべての段階で行われるもので、ITサービスの継続的な改善について解説されています。すべての段階でフローの見直しやPDCAサイクルを実施する必要があるということや、組織として高いパフォーマンスを実現するための手法などがまとめられています。

ITILの活用によるメリット

今や先進的な企業の多くがITILを活用して、競争力を高めています。なぜなら、ITILにはITサービスに関する仕事の内容や進め方、考え方などがグローバルな共通言語・知識体系でまとめられているからです。ここでは、ITILの活用方法および活用によって得られるメリットをご紹介します。

なお、実際の導入事例についてはこちらからご覧いただけます。

市場環境への対応力の向上

ITILを導入すれば、ITサービスのライフサイクルマネジメント能力を身につけることができるため、適切なタイミングでのサービス提供が可能になります。サービスを提供するタイミングがわかれば、市場環境にも柔軟に対応できるようになります。

利用者の満足度向上

ITILを活用すればITサービスの品質をより可視化できるようになります。ITILの活用によってサーバーやジョブの数などの基礎数値のほか、運用フローなどを数値で管理できるようになれば、細かい改善が行えるようになります。結果的にユーザーの満足度を向上させることが可能です。

ビジネスのレジリエンス強化

ITILを導入すると、システムの安定運用に向けたリスク管理能力が上がります。問題管理を行うことでインシデントの発生率を下げ、サービスを安定的に提供することが可能です。

サービス提供の費用対効果向上

ITILを活用すればノウハウの共有やオペレーションの整備を通して、効率的なシステム管理を実現します。無駄なコストを削減できるため、今よりも低コストでサービスを提供できるようになります。

ITILを活用する上で意識するとよい3つの「P」

ITILは、ITサービスの運用管理に必要な実践規範を詳細に記載しています。ですがその一方で、始めから完璧に導入しようとするとうまくいかないケースが多いです。最終的にうまく導入するには段階的に取り入れる必要があり、その際には次の3つのPを意識するのがおすすめです。

1つ目はProcess(プロセス)です。業務のやり方を高度化するために、どのように役割と責任を最適化するのがベストか意識してみましょう。
2つ目はPerson(人)です。業務に関わるメンバーの知識とスキルを向上させなければプロジェクトはうまくいきません。段階的にメンバーの知識レベルを上げていきましょう。
最後はProduct(ツール)です。ITILをそのまま導入するのは難しいため、ITILを導入するためのツールやサポートサービスを適切に活用しましょう。

ITILでよく起きる4つの失敗事例

ここでは、ITILを導入する際に起こり得る失敗事例をご紹介します。いずれもツールをうまく活用すれば防ぐことができるため、事前に把握しておきましょう。

同じインシデントが繰り返し発生してしまう

インシデント管理だけをしていても根本的な解決にはなりません。なぜならインシデントの発生原因がわからなければ恒久的な対策が練られないため、同じことの繰り返しが起こり得るからです。
インシデントの発生件数を減らすには、問題管理と変更管理のプロセスを取り入れなければなりません。

ユーザーからの問い合わせ、サービス要求に電話で対応している

電話でインシデントの報告を受け付けている場合、オペレーターは通話内容を手動で書き起こしておかなければなりません。もしインシデント報告をメールで受け付けていれば、「書き起こす」という工数を削減することが可能です。
ITILではセルフサービスポータルとサービスカタログを活用してサービス要求してもらう方法を推奨しています。

サービスデスクとIT資産管理を共有していない

サービスデスクチームとIT資産管理チームが別になっていると、すべての担当者がインシデントが発生しているIT資産管理を把握するまでに時間がかかります。

情報の共有が行えていないと、インシデントが発生する度にサービスデスクがIT資産管理チームに確認する必要があります。インシデント解決までに時間がかかるほか、効率的な解決も難しいでしょう。
インシデントの解決率を上げるためにも、IT資産情報とインシデント情報を一元的に統括できる環境をつくりましょう。

ExcelやWordなどで管理をしている

ExcelやWordなどにはITILに対応したシステムや項目が備わっていないため、それぞれの担当者が運用面でカバーしなければならない場面が増えてしまいます。
専用のツールを活用すれば、担当者の工数を減らすだけでなくミスも減らせるのでおすすめです。

まとめ

ITILは世界中で活用されていますが、中途半端に導入するとそのメリットを享受できないばかりか、コストばかりが増えてしまいます。ITILの導入を検討しているシステム担当者は、専門ツールなどを活用して効率的に導入しましょう。


ITILの導入後に、ITILサービス管理ソリューションをお探しの方は、Ivanti Software株式会社のITSM SERVICE MANAGEMENTの導入をご検討ください。

ITサービスの管理の最適化を行うことができます。詳しい機能一覧はこちらからご覧いただけます。