IT用語の説明

自律型エンドポイント管理

自律型エンドポイント管理とは?

自律型エンドポイント管理(AEM)は、AI/ML(人工知能/機械学習)を活用して、パッチ適用、設定、コンプライアンス、パフォーマンス、トラブルシューティング、デジタル従業員体験(DEX)など、従来IT管理者が担当していた業務を自動化し、常時人間の監督を必要としません。GartnerはAEMを、スピード・コンプライアンス・ユーザー体験を向上させる、変革的かつ知能的なアプローチと定義しています。1

企業はパッチの量の急増や人員不足に直面しており、従来の手動管理プロセスでは対応できなくなっています。ITやセキュリティチームは、日々発見される脆弱性、絶え間なく発表されるパッチ、重大な脅威が数時間以内に兵器化される状況で、終わりなき競争に巻き込まれています ― 時にはパッチが供給される前に攻撃が始まります。AEMによって、手動作業を減らし、セキュリティ体制を向上させ、エンドポイント管理を高い自立性でユーザー体験を強化できます。

市場の進化

エンドポイント管理分野は、PCやモバイル端末を管理する基本的なユニファイドエンドポイント管理(UEM)から、クラウド中心・AI強化の自律型システムへと急速に進化しています。UEMの成熟には、ツール統合やクロスプラットフォーム対応が含まれます。Forresterは、UEMが自己修復・セキュリティの統合・エクスペリエンス分析を搭載していると指摘します。AEMはUEMを基盤に、AIによる意思決定ロジック、自律型ワークフロー、継続的なコンプライアンス強制を追加しています。2

市場の成長

ユニファイドエンドポイント管理市場:評価額は2022年の44.8億ドルから、2030年には217.9億ドル(年平均成長率22.4%)へと急成長が予想されています。別の報告では、2023年の55億ドルから2032年に242億ドル(年平均成長率18.6%)への拡大、また2024年の66億ドルから2032年に326億ドル(22.1%)、さらに2025年の70億ドルが2030年には150億ドル(26.3%増)という見方もあります。3 Gartnerは、2029年までに50%以上の組織が自律型エンドポイント管理を導入すると予測しています。4

主な推進要因

エンドポイントの増加、リモート/ハイブリッドワーク、セキュリティとコンプライアンス要件、運用効率、デジタル従業員体験(DEX)の最適化が、主要な推進要因です。手動管理が残ると、未適用のエンドポイントや違反リスクが増し、約60%のセキュリティ侵害は既知だが未修正の脆弱性から発生しています。

導入率

Gartnerは、2029年までに50%以上の組織がAEMを導入すると予測しています。リスクベースのパッチ適用、異常検知、ゼロタッチ導入など、AEMの自律的機能が、先進的な組織で導入を加速させています。5

AEMの主なユースケースは何ですか?

AEMはまだ新しく進化しているため、ユースケースも拡大しています。以下は主なユースケースの例です。

ユースケース 説明

リスクベースのパッチ管理

  • 脆弱性の重大度と攻撃の可能性に基づきパッチを自動で優先・適用します。
  • セキュリティ侵害リスクを減らし、コンプライアンス対応を加速します。

ゼロタッチデバイスオンボーディング

  • ITの手を借りずに新しいエンドポイントを完全自動でプロビジョニングします。
  • リモート・ハイブリッドワークに最適です。

継続的コンプライアンス強制

  • リアルタイムで構成逸脱の監視と修正を行います。
  • HIPAAやGDPRなど規制への準拠を確保します。

自己修復機能

  • パフォーマンスやセキュリティ問題を自律的に検知・解決します。
  • ダウンタイムを最小化し、従業員の生産性向上に寄与します。

デジタル従業員体験の最適化

  • テレメトリとAIを用いて従業員に影響する問題をプロアクティブに解決します。
  • 満足度を高め、ヘルプデスクへの問い合わせ件数を削減します。

自動化されたソフトウェアライフサイクル管理

  • アプリケーションの展開、アップデート、廃止までを管理します。
  • 手動作業や運用負荷を減らします。

脅威の封じ込めと隔離

  • 侵害されたエンドポイントを自動でネットワークから隔離します。
  • サイバー攻撃時のラテラルムーブメントを防止します。

自律型エンドポイント管理(AEM)を導入する主なメリットは何ですか?

1. リスクを積極的に低減:リスクベースのパッチ適用と継続的コンプライアンス強制

攻撃者へ後手に回る状況から脱却しましょう。従来型のリアクティブなパッチ適用では、脅威が現れる重要なタイミングに脆弱な状態が続きます。脆弱性公表から24時間以内に28%の攻撃が開始され6、ゼロデイ脆弱性がパッチ公開前に悪用されるケースも多発しています7。人より速く対応する知的な自動化が必須です。

AEMはセキュリティ体制を根本から変革します:

  • AIによるリスクの優先順位付けで、最重要の脆弱性から自動的に特定・修復。有限なリソースを効率的に活用できます
  • 継続的なコンプライアンス監視で、すべての端末が常時セキュリティポリシーに適合。手動監査の抜けを防ぎます
  • OS・アプリの自律型パッチ適用により、パッチ公開から実施までの危険な遅延を排除。攻撃者の狙う隙間をふさぎます
  • 統合型脆弱性管理によって、端末からクラウドまで一元的にリスクの可視化が可能に
  • 自己修復型エンドポイントが構成逸脱・設定ミス・方針違反を自動で検知・修復し、インシデント発生前に遮断

ビジネスへの影響:現在、全データ漏洩の約20%が脆弱性悪用によるもので8、一件あたりの損失は平均488万ドル9に及びます。AEMは「事後対応型の火消し」から「事前防御型の脅威予防」へとシフトします。攻撃が始まる前に遮断できるため、漏洩後に慌てる必要がなくなります。

2. IT業務効率の向上:インテリジェントな自動化が反復作業を排除し、ワークフローを加速

IT担当者は日々のチケット対応に追われ、重要な業務に集中できないのが現状です。73%のIT部門が手作業による業務ボトルネックを報告しており10、64%が運用の煩雑さがユーザー体験向上の妨げになっている、13%のチケットが生産性損失の80%を占めるとされています11。もはや手動プロセスでは対応できません。

AEMならIT部門の能力を大きく拡張できます:

  • 自己修復自動化で、よくある問題を人の手を介さず解決。チケット件数が激減し、ITスタッフは戦略的業務に集中可能
  • ゼロタッチプロビジョニングで、新規端末の設定も自動化。数日かかっていた導入が即時かつミス無く完了
  • インテリジェントなパッチオーケストレーションにより、テスト・スケジュール・展開も自律的に実行。手作業の調整は不要
  • 自動コンプライアンス報告で、監査対応書類も即座に生成。煩雑な手作業から解放されます
  • 統合管理コンソールで全端末・OSの一元管理。ツール乱立や切り替え負荷ゼロで運用効率UP

効率化のインパクト:自動化を導入した企業の多くが反復業務34%減12、解決時間34%短縮、IT時間の大幅回復を報告しています。2,000人規模なら生産性コストで年間400万ドル近い節減が可能で、セキュリティや満足度向上も同時達成13。76%の企業が人材不足14、IT担当者の66%がバーンアウト15に悩む時代、もはや自動化は必須です。

3. 従業員体験の向上:自己修復型端末とAIによる洞察で生産性・満足度を強化

従業員のフラストレーションは莫大な損失を生みます。平均で年間10.5日分が技術的なトラブルで失われ16、46%は毎週3時間以上をIT問題に費やし17、ちょっとした障害でも74%が日常業務に支障をきたしています18。55%は継続的なIT問題が気分や職務満足度に悪影響を与えると回答19。技術が障害となると、生産性も人材も損なわれます。

AEMが従業員の技術体験を一新します:

  • 自己修復型エンドポイントが問題を自動検知・解決。利用者が気付く前にダウンタイムを防ぎます
  • インテリジェントセルフサービスで、よくある問題は即時自己解決。ヘルプデスク待ちやユーザーストレスを軽減
  • 予兆保全(AI活用)により、障害予備軍を先回り把握。機器の最適運用が可能に
  • アダプティブパフォーマンス最適化は、利用状況に応じて設定を調整。遅延やストレス原因を排除
  • 複数端末間で一貫した快適な使用感。Windows・Mac・モバイル・特殊端末でもパフォーマンスは安定

従業員体験の利点:IT担当者の87%が「良好なデジタル従業員体験は生産性向上に直結」と回答、85%が満足度向上、77%が定着率向上を挙げています20。ITへの問い合わせだけで4割がストレス21、5割超が個人端末を回避手段にしている現状22(セキュリティリスクにも直結)、AEMならエンドユーザーが望む使い勝手・企業が求める統制を両立できます。

ビジネスへの最終効果:技術的なトラブルで従業員が月平均3.6回中断、必須アップデートでさらに2.7回。1回あたり15分換算で、1人当たり月1.6時間分の生産性消失。2,000人・時給100ドルなら月32万ドル、年間約400万ドルの損失に相当23。卓越したデジタル体験があれば、従業員エンゲージメント・定着率・オンボーディング速度・顧客満足度がアップ。技術トラブルに悩まず本業=イノベーションや戦略に集中できます。AEMは単に端末を直すだけでなく、人の可能性を妨げる技術障壁を取り除きます。

連鎖効果:メリットが雪だるま式に拡大

この3本柱は独立して機能するのではなく、相互強化されます:

  • セキュリティ強化がヘルプデスク負荷を減らします
  • IT効率向上で応答時間短縮・従業員満足度UP
  • 従業員体験の改善がシャドーITや非正規の運用を減少
  • リスク低減効果で予算・モラルへの損害を未然防止
  • 自動化により人材不足・バーンアウトの悪循環を断ち切ります

AEM導入企業は、これら3分野すべての劇的な改善を同時に実感でき、相乗効果で好循環が生まれます。

最後に、AEM導入を検討する企業は、以下の4つの基盤的優先事項に集中すべきです24

  1. IT・セキュリティ全体の網羅的な可視化体制を確立(見えないものは自動化できません)
  2. 既存ワークフローにAI・自動化機能を組み込むため、仕組みとインフラを準備
  3. ITチームもエンドユーザーも自律型システムに適切に対応するためのトレーニングを(ITはAI推奨内容の解釈や高度な案件対応、従業員はAIツールの活用法など)
  4. 従業員体験データを継続収集し、ワークフローの評価・改善につなげる

参考文献

1ガートナー・イノベーションインサイト:自律型エンドポイント管理、2025年
2Forrester:エンドポイント管理の未来
3Grand View Research UEM市場規模レポート
4ガートナー・イノベーションインサイト:自律型エンドポイント管理、2025年
5ガートナー・イノベーションインサイト:自律型エンドポイント管理、2025年
6DeepStrike - 脆弱性統計 2025年
7Indusface - 2025年サイバーセキュリティ統計227件
8Verizon データ漏洩調査レポート (DBIR) 2025年、複数ソースに引用
9IBMデータ漏洩コストレポート(PKWare掲載)
10ガートナー 2024 IT資産管理調査(Lansweeper掲載)
11HappySignals 2025年グローバルIT体験ベンチマークレポート(Auxis掲載)
12Ivanti 2025年 デジタル従業員体験(DEX)レポート
13Ivanti 2025年 デジタル従業員体験(DEX)レポート
14Qubit Labs - 2025年 IT人材不足
15Modern Health調査(Forbes掲載)
16Netfor - ITヘルプデスクサポートの戦略的価値
17Netfor - ITヘルプデスクサポートの戦略的価値
18Zendesk - 従業員1,000人への調査
19Ivanti 2025年 デジタル従業員体験(DEX)レポート
20Ivanti 2025年 デジタル従業員体験(DEX)レポート
21Zendesk - 従業員1,000人への調査
22TeamViewer - デジタルフリクション調査
23Ivanti 2025年 デジタル従業員体験(DEX)レポート
24自律型エンドポイント管理の利点レポート