概要
ESM、顧客中心型サービス、財務、プロダクトオーナーシップ、運用、インシデント管理などの明確なユースケースを定義することで、ITディレクターはITSMの機能を、ステークホルダーに響く具体的なビジネスメリットへと落とし込めます。セルフサービスポータル、自動化されたワークフロー、レポーティング、資産管理と変更管理、インシデントの自己修復といった機能を優先し、生産性向上、コスト削減、迅速な解決、コンプライアンス強化という目標にソリューションを整合させます。これらの整合した機能を基準にベンダーの候補リストを作成し、現実的なタイムラインと測定可能なマイルストーンを活用して選定を効率化し、ITSMアップグレードへの投資に向けた根拠あるビジネスケースを構築します。新しいITSMツールへのアップグレードや切り替えを試みるITディレクターには、多くの障壁が立ちはだかります。ベンダー変更に伴うコストへの懸念への対応から、サービス管理の成熟度評価まで、ITSMがビジネスをどのように前進させるのか、その理由と方法を示す根拠を構築することは困難を伴います。幸い、Info-Techはこの選定ガイドをまとめています。
その中でも大きな障壁となるのが、ステークホルダーに価値を示し、賛同を得る方法です。ITソリューションは会社にコストをもたらすだけだという認識は根強く、ITSMアップグレードの承認を得ることは非常に困難です。
しかし、ITは単なるテクノロジーの提供者にとどまりません。適切なソリューションがあれば、部門間のサイロを取り払い、プロセスをつなげることで、エンドユーザーと技術担当者の双方にとってよりシームレスな体験を実現できます。ソリューションの価値を真に示すには、ITディレクターはITSMがもたらす実際のメリットをさらに掘り下げ、ステークホルダーの支持を得られるビジネス上の利益と結び付ける必要があります。この価値を示す方法については、Info-Techの「ITサービス管理選定ガイド」をご覧ください。
ユースケースの定義がビジネスケース構築に役立つ理由
Apptioの調査によると、CIOの77%がアプリケーションの実際のコストを明確に説明することに苦労しています。しかし、これは承認を得るための鍵です1。ユースケースを定義することは、成長に不可欠なコストとメリットを表現する効果的な方法です。適切に定義されたユースケースは、ビジネス上および技術上の推進要因、システムの現状、資金調達、進捗を妨げ得るリスクに至るまで、プロジェクトのほぼあらゆる側面を明確かつ簡潔に示します。
ユースケースの導入に成功すれば、運用効率、顧客満足度、コンプライアンスの向上につながります。これらは通常、IT部門にとって重要なメリットです。一方で、ステークホルダーが最も重視するのは、収益創出率、コスト削減、純利益の増加です。こうした主要目標を念頭に置き、各機能がどのように使用されるかに基づいてビジネスケースを策定することで、ソリューションが最も必要とされる領域と、ステークホルダーの関心を引く成果を達成する方法を十分に示す、説得力のある論拠を提示できます。
チームが高レベルの目標を特定したら、次の7つのユースケースが、重要な機能の絞り込みとITSM選定プロセスの迅速化にどのように役立つかを確認してください。
- エンタープライズサービス管理
- 顧客中心型サービス
- カスタマーサポート管理
- IT財務
- プロダクトオーナー管理
- IT運用管理
- インシデント管理
1. エンタープライズサービス管理
企業は、サービス管理ソリューションをIT部門の外へ拡張し、他部門にも展開する価値を認識し始めています。実際、エンタープライズサービス管理(ESM)ソフトウェアへの投資によって組織がどのような恩恵を受けたかを調査したHDIのレポートによると、企業の75%が、サービスをIT部門外に拡張した後に生産性の向上を実感しました2。人事やコーポレートオペレーションから、施設管理、カスタマーサポートに至るまで、ESMソリューションはワークフローの自動化、インシデントおよびサービスリクエストの整理、リソースの一元化を可能にします。
ESMへの投資は、従業員満足度の向上、ワークフローの可視性向上、情報に基づくリスク軽減、総所有コスト(TCO)の低減など、数多くのビジネス成果を通じて生産性に大きな影響を与えます。
このユースケースを満たす機能を特定するには、次の領域を確認してください。
- セルフサービス機能
- サービスおよびソリューション設計
- ナレッジとレポーティング
2. 顧客中心型サービス
顧客中心型サービスは、ITSMソリューションのアップグレードや切り替えを促す主要な要因です。企業は、セールスファネルの複数の段階を通じて顧客の関心を維持できる、より多様なサービスの提供を目指しています。このアプローチでは、顧客専用に設計されたパーソナライズされたポータルやWebスペースを通じて、リソースを閲覧し、一般的な問題に対処できるようになります。より多くのセルフサービスオプション、コンテンツ管理機能、迅速なサービスおよび製品提供を実現することで、顧客中心型サービスは透明性を高め、最終的にカスタマーエクスペリエンスを向上させます。
サービス管理をIT部門の外へ拡張して以降、従業員満足度が52%向上したと報告する企業もあり、技術担当者にとってもメリットがあります3。より効率化されたシステムにより、カスタマーサービスの技術担当者は時間に余裕が生まれ、プロセスの強化や改善領域の特定に取り組めるようになります。
このユースケースを満たすには、次の領域を調査してください。
- セルフサービス機能
- サービスおよびソリューション設計
- ナレッジとレポーティング
- 技術担当者向けユーザビリティ機能
3. カスタマーサポート管理
HubSpotによる最近の調査では、調査対象企業のうちカスタマーサービスにヘルプデスクシステムを使用していたのは42%にとどまった一方、その86%が、ソフトウェアによって生産性が向上したと報告しています4。これは、専用の顧客関係管理(CRM)システムがサポートチームにもたらす価値を示しています。CRMは、トリアージソリューションやダッシュボードを備えた正確でタイムリーなレポーティングへのアクセスを提供し、顧客や顧客データの状況を把握しやすくすることで、企業が最高水準のサポートを提供できるようにします。より多くの企業が投資していないのが不思議なほどです。
外部顧客に提供するサポートの種類によっては、ITSMソリューションまたはCRMアドオンが最適な選択肢となる場合があります。たとえば、一次対応での解決を主な方針としている場合は、CRM機能を拡張する統合が適している可能性があります。一方、オムニチャネルアプローチを採用する場合は、ITSMソリューションの方が適しているかもしれません。
このユースケースを支援するには、次の領域を確認してください。
- サービスおよびソリューション設計
- ナレッジとレポーティング
- 技術担当者向けユーザビリティ機能
- インシデント管理
4. IT財務
Apptioの調査によると、IT財務に関する根拠あるインサイトを提示するITディレクターは、コストを最大10%削減しています5。財務の可視性が高まることで、ITディレクターは予算の差異を迅速に分析し、日常的なコストをイノベーション関連の支出から切り分けて把握できます。設備投資(CapEx)と運用費(OpEx)の可視性が向上すると、企業は、サービスの資金調達方法に関する意思決定を導くために活用できる明確で把握しやすいデータという、新たな戦略的ツールを手に入れることができます。このユースケースを支援する機能については、次の領域を確認してください。
- サービスおよびソリューション設計
- レポーティングと分析
- 技術担当者向けユーザビリティ機能
- IT財務向け資産管理
- 構成管理機能
5. プロダクトオーナー管理
今日の企業には、より高い俊敏性と部門横断的なコラボレーションによって、運用上のニーズに応えることが求められています。この考え方は、チームの働き方に関する思想を確実に進化させ、アプリケーションのライフサイクル全体の管理に向けた、よりプロダクト中心の環境を生み出しています。
DevOpsまたはサイト信頼性エンジニアリング(SRE)の支援は、提示すべき重要なビジネスケースです。技術プロフェッショナルの84.3%が、顧客に影響する問題によってイノベーション能力が大きく左右されると報告しています6。ITSMの成熟度を高めるには、企業は統合、自動テスト、インフラストラクチャプロビジョニングを通じて、ワークフローとコミュニケーションの改善に投資する必要があります。
このユースケースを満たす機能を特定するには、次の領域を確認してください。
- サービスおよびソリューション設計
- ナレッジとレポーティング
- 開発およびプロジェクト管理
- 問題管理
- 変更・構成管理
- インシデント・イベント管理
6. IT運用管理
自動化とレポーティングは、運用を成熟させ、組織を成長に向けて位置付けるうえで大きな役割を果たします。IT運用を適切に管理するには、より大きな根本原因を正確に検出し、繰り返し発生するインシデントを最小限に抑えることが欠かせません。
企業がシステムの成熟を達成できない理由は、手動プロセスに過度に依存し、自動化への投資が十分でないという単純なものである場合もあります。ScienceLogicのレポートによると、手動プロセスではなく自動化を使用した組織では、平均復旧時間(MTTR)と手動トラブルシューティング作業が70%削減されました7。
このユースケースを満たすには、次の領域を確認してみてください。
- サービスおよびソリューション設計
- ナレッジとレポーティング
- 技術担当者向けユーザビリティ機能
- 問題管理
- 変更・構成管理
- インシデント・イベント管理
運用の可視性が高まることで、ITチームは停止やその他のイベントを防止し対応する能力を備えながら、自動化とパフォーマンスをより適切に監視できます。IT運用管理に重点を置いた機能は、分析のスピードを高め、対応時間も短縮します。
7. インシデント管理
インシデント管理ソリューションの改善を目指す企業にとって、問題にリアルタイムで対処することは常に重要な課題です。エンドユーザーがより迅速で手厚い成果を求めるようになる中、技術担当者には、より速く対応し、より少ないやり取りでインシデントを解決することが求められています。Ivantiによる最近の調査では、エンドポイントの問題の最大80%が、ユーザーから報告される前に自己修復テクノロジーによって解決されていました8。セルフサービスを可能にするソリューションに投資することで、エンドユーザーは技術担当者の対応を待つことなく、迅速に解決策を得られます。
このユースケースを満たす機能を特定するには、次の領域を確認してください。
- セルフサービス機能
- サービスおよびソリューション設計
- ナレッジとレポーティング
- 技術担当者向けユーザビリティ機能
- 資産管理
- 問題管理
適切なインシデント管理システムがあれば、エンドユーザーと技術担当者の双方が、自ら問題をより迅速に解決できるようになり、同時に繰り返し発生するインシデントも削減できます。
最も重要な機能に基づいてベンダーリストを作成する
ここからは、ユースケースに最も適合する機能を整理し、要件リストを作成します。チームが最終判断に向けて候補を絞り込む中で、最も重要な要件を満たすベンダーを選定対象に残すべきです。また、現実的なタイムラインを設定することも重要です。プロジェクトのマイルストーンを明確にすることで、成功指標を認識し説明しやすくなり、ステークホルダーの関与を維持できます。
ITSMの目標に向けたビジネスケースの構築は、多くの要素が関係する大きな取り組みであり、ビジョンから注意がそれる可能性もあります。そのため、組織の成長にとって最も重要な中核的なユースケースと機能に焦点を当て続けることが大切です。適切に定義されたユースケースは、ITディレクターがソリューションの選択について説明し、正当性を示す助けとなり、すべての関係者にとってITSM選定プロセスを明確かつ効果的なものにします。
チームの賛同を得る方法について、さらに詳しく知りたいですか?
変化しないことによるコストとベンダー切り替えの最適な戦略について詳しくは、Info-Techレポートをご覧ください。
[1] “100 IT Cost Reduction Questions You Should be Asking.” Apptio Inc. 2020
[2] “The State of Enterprise Service Management.” HDI and Samanage, November 2018. Web.
[3] “The State of Enterprise Service Management.” HDI and Samanage, November 2018. Web.
[4] “The State of Customer Service in 2020.” HubSpot, July 2020.
[5] “100 IT Cost Reduction Questions You Should be Asking.” Apptio Inc. 2020
[6] “The State of Automation in Incident Management.” xMatters, 2020.
[7] “Reduce MTTR by Automating Troubleshooting.” ScienceLogic 2020.
[8] Ivanti, 2020.