ファイル共有ソフトは、組織の作業効率を上げるのに大きく役立ちます。社内での情報共有を効率的に行うために、導入している企業も少なくないでしょう。しかし、ファイル共有ソフトは便利である反面、大きなリスクも有しています。リスクを考えずに利用していると、大きな被害を受けることにもなりかねません。

今回はファイル共有ソフトにどのようなリスクが潜んでいるのか、リスクを回避するためにどのような対策を練ればいいのかについてご紹介します。ファイル共有ソフトを既に導入している、もしくは導入を検討している方は参考にしてみてください。

ファイル共有ソフトの使用以外にも、情報の取り扱いにおいては気をつけなければならないリスクは多くあります。情報漏えいのパターンなどについて詳しく知っておきましょう。以下の記事でご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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ファイル共有ソフトとは

ファイル共有ソフトとは、不特定多数のPCの間でファイルを共有してやりとりを行うためのサービスです。さまざまな仕組みが使われていますが、基本的には「P2P(Peer to Peer)」という技術が用いられているため、「P2Pソフト」とも呼ばれています。

一般的なWebサービスには「クライアント・サーバモデル」と呼ばれる形式が採用されており、固定されたサーバーにあるデータを自分たちのPCにダウンロードして利用します。

対してP2Pは、それぞれのP(ピア:対等に通信を行うユーザー)がデータを持っていて、同じ立場でデータのやりとりを行います。クライアント・サーバモデルのように「サーバー」としての役割が固定されておらず、ユーザーそれぞれがクライアントとサーバーとの両方の役割を果たすことになります。

ファイル共有ソフトを利用してファイルをやりとりするPCには、ネットワークを公開するデータを保管するための専用のフォルダが用意されます。そのフォルダにファイルを格納することで、別の人たちとファイルを共有することが可能になります。
 

ファイル共有ソフトの種類

ファイル共有ソフトは、その仕組みから大きく3つに大別されます。どのように分類されているのかご紹介します。

ハイブリッドP2P

ハイブリッドP2Pとは、P2Pとクライアント・サーバーモデルを複合(ハイブリッド)した仕組みです。データの所在情報はサーバー上に存在しているため、サーバーに問い合わせをすれば、特定のデータがどこに存在しているのかを確認することができます。

クライアント・サーバーモデルと違うのは、データの所在情報がサーバーにあるだけで、データそのものがサーバー上にあるわけではないことです。データを検索するサーバーのことをインデックスサーバと呼びます。

ピュアP2P

ピュアP2Pとは、ハイブリッドP2Pとは異なり、インデックスサーバを持たないP2Pのことです。ユーザー同士でデータのやりとりをするだけで、ファイルの共有をすることができます。データの探索もユーザー同士の協力のもと行われます。ユーザー個々人が発行した探索の情報をそれぞれに収集、拡散させ、データを発見した際にはその結果をさかのぼってデータの場所を特定します。

スーパーノード型P2P

ハイブリッドP2Pと同じような構造のスーパーノード型P2Pは、サーバーではなくスーパーノードと呼ばれるハイスペックマシンがデータの探索を行います。ノードはピアと同じ意味を指し、一般的に情報のやりとりをするPCユーザーやPC自体のことを指します。

各ユーザーが情報交換の基点となった場合などに特に「ノード」と呼ばれ、複数のノードがデータ探索するのがスーパーノード型です。

固定されているサーバーとは異なり、スーパーノードの場合は検索に参加するノード数が自動的に調節されます。そのため、固定サーバーよりも早くデータの検索や情報伝播を可能にしているのです。

ファイル共有ソフトのメリット

ファイル共有ソフトは、音楽や写真の共有をはじめとしたプライベートでの使用はもちろん、ビジネスにも有効に活用できるサービスです。例えばメールには添付できないような大きなファイルも、ファイル共有ソフトを使えば気軽に相手と共有することができます。社内のネットワークを利用することができない社外の人に大きなデータを送る際には、特に役立ちます。

また社外で仕事をする場合、会社のPCとは別のデバイスでデータを開くにもファイル共有ソフトは役立ちます。仕事のデータをファイル共有ソフトに入れておけば、社外からアクセスして仕事をすることが可能なのです。

ファイル共有ソフト使用におけるリスク

便利な点もあるファイル共有ソフトですが、その一方で大きなリスクもはらんでいます。使い方を間違えれば大きな被害を受けることにもなるため、どのようなリスクがあるのかをおさえておきましょう。

ファイル共有ソフトを狙ったウイルス攻撃

ファイル共有ソフトはそのサービスの特性上、多くのデータとユーザーが集まるため、サイバー攻撃の対象になりやすいです。ファイル共有ソフトのネットワーク上に、ウイルス感染したファイルが出回っていることもあり、ウイルスに気づかずにダウンロードするとパソコンがウイルスに感染してしまいます。ウイルスに感染してしまうことで、パソコンに入っていた個人情報が外部に漏えいしてしまうこともあるのです。さらに恐ろしいのは1台のパソコンがウイルス感染してしまうと、ファイル共有ソフトで共有している他のユーザーもウイルス感染してしまう恐れがあることです。

著作権の侵害リスク

ファイル共有ソフトのネットワークには、著作権を侵害するような音楽や映画のデータが出回っていることもあります。実際に映画などのデータを違法に複製して、公開しているケースは非常に多くみられます。「違法の複製物」だと自分で意図していなくても、ダウンロードをしてしまえば違法となることも覚えておかなければなりません。

ファイル共有ソフトを利用するのは違法ではない

ファイル共有ソフトの利用にはさまざまなリスクが潜んでおり、先にご紹介した著作権の侵害をはじめ、実際にこれまでに大きな事件となったケースも複数ありました。ファイル共有ソフトの開発者が検挙されたこともあります。そうなると、自然にファイル共有ソフト自体に違法性があるようにも感じられます。しかし、ファイル共有ソフトを利用すること自体には違法性はありません。合法的なデータを共有するのであれば、なんら問題はないのです。

なかにはファイル共有ソフトを使うこと自体を違法だと思いこみ、すべて「違法アップロード」「違法ダウンロード」だと認識している方も少なからずいます。しかし違法となるのは、違法なデータや著作権を侵害するデータをやりとりした場合のみです。自分が著作権を持たないデータを共有する場合でも、事前に著作権者に許可をとっていれば問題ありません。

ファイル共有ソフトにさまざまなリスクがあることはもちろん、何が合法で何が違法なのかも把握しておきましょう。

ファイル共有ソフトを利用する際に気をつけること

ファイル共有ソフトを安全に使うためにも、いくつか注意点をご紹介します。

ウイルス対策ソフトを利用する

ファイル共有ソフトからウイルス感染するのを防ぐためにも、ウイルス対策ソフトをインストールしておきましょう。ダウンロードするデータがウイルス感染している場合には忠告してくれます。ただし、近年では続々と新種のウイルスが誕生しているため、常に最新の対策をし続けなければなりません。

そのほかにも、社内で行うべきセキュリティ対策は多くあります。メール使用時やWebサイト閲覧時などに起こりうるリスクや対策を知っておきましょう。以下の記事で詳しくご紹介していますので、参考にしてみてください。

メールを使用する際の情報セキュリティ対策について知りたい方はこちら

マルウェアの脅威や対策について知りたい方はこちら

企業組織内でのサーバーのセキュリティ対策について知りたい方はこちら

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アカウントは別々に利用する

複数人で同じパソコンを使う場合、他の誰かのファイル共有ソフトによるトラブルに巻き込まれるリスクがあります。その場合に被害を最小限に抑えるためにも、アカウントを分けて利用しましょう。

まとめ

今回は、ファイル共有ソフトとはなにか、またどのようなリスクが潜んでいるのかやその対策についてご紹介しました。ファイル共有ソフトは正しく使えば非常に便利なシステムです。ただし、一歩間違えれば情報漏えいなどのリスクが発生するため、利用する際は慎重に行うようにしましょう。

情報漏えいなどを防ぐために、業務上リスクが考えられることについて詳しく知っておく必要があります。以下の記事で詳しくご紹介していますので、ぜひご覧ください。

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