IT資産を適切に管理するためには、IT資産の状態を確認しなければなりません。その際に欠かせないのが、「IT資産の棚卸」です。

そこで今回は、IT資産の棚卸の詳細と基本的な手順、手順の効率化についてご紹介します。より効率的にIT資産の棚卸を行うために、参考にしてみてください。

棚卸とは

棚卸とは決算期の末日の時点で保有する資産(商品・製品など)の数量と品質のチェックを行い、価値を評価することを指します。多くの場合、年末あるいは企業が設定する年度末に実施されます。

棚卸では、社員全員が利用しているPCやサーバーなどの「ハードウェア」、システムやライセンスなどの「ソフトウェア」などのIT資産の現状把握も含まれます。

もしこれらが適切に管理されていなければ、PCが余っているにも関わらず新品を購入してしまったり、不必要なソフトウェアを購入してしまったりと無駄なコストが発生してしまいます。そのため、IT資産に関しても棚卸を行い、状態や費用を把握することが重要です。

IT資産の管理対象

「ハードウェア」「ソフトウェア」「ライセンス」の3つの資産が主な管理対象となります。ここでは、それぞれの資産についての詳細をご紹介します。

ハードウェアの管理

PCやスマートデバイス、プリンタやスキャナー、メモリ、ハードディスクなどの周辺機器を含むハードウェア全般が管理対象に含まれます。

誰がどこでPCを管理・利用しているのかを把握できていないと、そのPC上にどのようなソフトウェアがインストールされているかについても正確に把握することができなくなります。そのため、社内にどのようなハードウェアがあるのかを漏れなく調査することが重要です。

ソフトウェアの管理

それぞれのPCにインストールされているソフトウェアがどのようなものなのか、という点においても管理が必要です。また、ソフトウェアの種類だけでなく、それぞれのバージョンや更新状態などの管理も必要です。

特にウイルス対策ソフトは、社内全体の端末にインストールされているかどうかを確認するだけでなく、正しく機能しているかまでの管理が必要になります。

ソフトウェアライセンスの管理

ソフトウェアライセンスとは、ソフトウェア製作会社と交わすソフトウェアの使用権に関する契約のことです。

ソフトウェアライセンスの契約を延長せずに使用期限を過ぎて使用し続けた場合犯罪行為となり、コンプライアンス違反となってしまいます。そうならないためにも、誰がどのライセンスを使用しているのかや、使用期限などをしっかりと確認することが重要です。

また、パッケージソフトウェアにおいてはライセンスを証明するために、インストールに使用した媒体を把握し、ライセンス番号が確認できるように箱なども保管・管理しておくことが必要です。

IT資産の棚卸における3つの手順

IT資産の棚卸方法には大きく分けて3つの手順があります。

ここでは、棚卸の手順についてご紹介します。

資産管理台帳の作成

IT資産の棚卸における最初の手順は、正確な台帳を作成することです。

台帳に正確な情報が記入されていない場合、棚卸時に現物数と一致せず無駄な税金を支払わなければならなくなる可能性があります。特に、大量のIT資産を購入・廃棄した際は記入漏れやミスが発生しやすくなるため注意しましょう。

管理する資産が少ない場合はエクセルで作成した台帳でも管理することは可能です。ただし、資産が増えるにつれて手間が膨大に増え、情報の抜け漏れや入力ミスなどが発生する恐れもあるので注意しましょう。

ソフトウェアライセンスの管理

資産管理台帳の作成後は、ソフトウェアライセンスの管理を行いましょう。

まずは、社内のパソコンにインストールされているソフトウェアの種類・数を確認し、これに対するプロダクトキーがすべてそろっているかどうかを確認します。詳細な内容を把握して台帳化することが必要です。

ソフトウェアライセンスの管理には膨大な工数が必要となりますが、先述したように、コンプライアンスの遵守やコスト削減といった面で大きなメリットを得ることができます。

台帳と現物の照合作業

IT資産の棚卸業務では、上記の手順で作成した台帳上の機器やソフトウェアが実際に存在するのかどうかを定期的に確認する「照合作業」を行う必要があります。照合作業とは、IT資産に「資産管理番号」と呼ばれるシールを貼り、台帳と一致しているか目視による確認作業を行うものです。

最近ではシステムを活用して機器に貼付してあるバーコードやICタグをリーダーで読み取り、システム上で照合作業を行うケースも増えてきています。システム上で照合できるため、人的・時間的コストの削減をすることが可能です。

IT資産の棚卸を効率化させるには?

IT資産の棚卸では、さまざまな項目を確認し、管理しなければいけません。

そこで「IT資産管理ツール」を利用すれば、業務の効率化が期待できます。IT資産管理ツールによって機能はさまざまですが、ここではツールの代表的な機能についてご紹介します。

IT資産の一元管理ができる

IT資産管理ツールを導入することにより、1台の端末から社内ネットワークを介して接続されている端末やOA機器の稼働状況などを一元管理することができます。一元管理ができることで、担当者の業務負担を大幅に軽減することができます。

例えば、各端末のOS情報や、インストールされているソフトウェアの情報なども管理端末から閲覧可能です。また、機器の利用状況も閲覧でき、誰も利用していないPCやソフトウェアライセンスがいくつあるのかが分かります。そのため、利用していないものの再割り当てなどを有効に活用できるようになり、無駄な出費も防ぐことが可能です。

ライセンス状況の把握

ソフトウェアライセンスの適切な管理は、企業・組織のコンプライアンスの遵守のためのみではなく、セキュリティリスクを低減させるためにも必要です。IT資産管理ツールを導入すれば会社全体のライセンス管理を行えるため、ライセンスコストの適正化も図ることができます。

ウイルス対策ソフトやパターンファイルが最新でない機器も把握しやすくなるため、セキュリティ対策にも活かすことが可能です。

IT資産の使用状況を可視化

IT資産管理では、どの機器(PC、プリンター)がどのくらいの頻度で使われているのかということも把握しておく必要があります。

こうした機器の状況把握にIT資産管理ツールを使用すれば、組織内に数多くあるハードウェア、ソフトウェアなどのインベントリ情報を取得し、可視化することができます。その結果、作業を大幅に効率化できるだけでなく、トータルコストの削減にもつなげることが可能です。

ソフトウェアやファイルの配布

IT資産管理ツールの中には、ソフトウェアやファイルの配布機能を備えたものもあります。

アプリケーションやOSのセキュリティホールの修正など、アップデートファイルに配布やインストールを可能にするスクリプトを設定することが可能です。

この機能によって、機器管理のセキュリティ対策を使用者本人に任せるのではなく、システム管理者が主体となって実施することができるため、セキュリティ強化をより徹底できます。

まとめ

今回はIT資産の棚卸の効率化についてご紹介しました。IT資産の棚卸は資産台帳の作成、ソフトウェアライセンスの管理、台帳と現物の照合作業などと多大な時間かかります。ただし、IT資産管理ツールを導入することでそのような工数を大幅に減らすことができ、時間短縮や業務負担の削減につながります。IT資産管理を放置しておくとさまざまなリスクが発生してしまいますので、できる限り定期的に行い、セキュリティの強化や保護に努めましょう。